「点検が面倒」には理由がある。現場の若手が口に出せない4つの本音とリーダーが打つべき一手

「最近の若手は、点検作業をただの作業としてこなしている気がする……」 そんな風に感じたことはありませんか?しかし、彼らが「面倒だ」と感じる裏側には、実は現場の改善につながる重要なヒントが隠されています。

今回は、製造現場の若手社員が、毎日の点検作業で心の中でこっそり感じている「本音」と、それを解決するために私たちリーダーが取り組むべき具体的なアクションについて考えます。


1. 若手が口に出せない「点検作業」4つの本音

① 「判断基準」への不安:経験不足が招く心理的負荷

ベテランにとっては「当たり前」の感覚が、若手にとっては大きなストレスになっています。

  • 「異常なし」と書く勇気: 正常な状態が体感でわかっていないため、自分の判断に常にビクビクしています。
  • 曖昧な言葉の壁: 「いい感じに」「ガタがない程度に」といった数値化されていない指示は、若手を迷わせ、劣等感を生む原因になります。

② 「アナログ作業」への違和感:デジタル世代のリアル

スマホ一つで何でも完結する世代にとって、現場の古い慣習は「非効率」の象徴に見えています。

  • 二重入力の虚無感: 紙に書き、それをPCに打ち直す。この時間に「もっと合理的な方法があるはずだ」と不満を感じています。
  • 判子(ハンコ)のための時間: 作業そのものよりも、承認をもらうための「待ち時間」や「根回し」にエネルギーを削がれています。

③ 「身体的・環境的」なストレス:小さな不快の蓄積

毎日のルーチンだからこそ、ちょっとした「手間の多さ」がモチベーションを下げます。

  • 準備のオーバーヘッド: 数分の点検のために重装備を整える手間。
  • 「見るだけ」のための移動: 「カメラやセンサーがあれば行かなくて済むのに」という思いが、現場への足取りを重くします。

④ 「形骸化」への疑問:目的を見失った作業

「なぜこれをやるのか」に納得感がないと、作業は苦痛に変わります。

  • 思考停止の「オールA」: 変化のない記録を続ける中で、集中力を維持することの難しさ。
  • 改善の壁: 「昔からこうだから」という理由で、新しい提案が通らない環境への諦め。

2. リーダーとして、この「不満」をどう「改善」に変えるか

若手の「面倒だ」「困った」という本音は、現場に伸びしろがある証拠です。リーダーである私たちは、これらを個人の意識の問題として片付けず、**「仕組み」**で解決していく必要があります。

① トヨタ思考で「付随作業」のムダを徹底排除する

点検そのものではなく、点検に付随する「移動」「記録」「探す」といった時間をトヨタ思考の「ムダ取り」の対象にします。

  • デジタル点検への移行(DX): 紙の記録台帳を廃止し、タブレットやスマホでの入力に切り替えます。QRコードを設備に貼り、読み取るだけで入力画面が開く仕組みにすれば、「記録の二度手間」と「情報の検索」のムダが即座に解消されます。
  • 動線の最適化: 「点検のためにハシゴを取りに行く」といった動きを最小限にするため、点検箇所の近くに専用の道具を配置(定置管理)するなど、現場の5Sを徹底します。

② 「職人の勘」を「数値と画像」で標準化する

若手が最も不安に感じる「判断の迷い」を、誰でも判断できるレベルまで標準化します。

  • 限界見本のデジタル化: 「いい感じに」という指示を捨て、「この写真の状態ならアウト」「この数値以下なら交換」という基準を明確にします。
  • AIによる判定補助: 異音の判断に「音解析AI」を導入したり、計器の数値をカメラで読み取り自動判定したりすることで、経験の浅い若手でもベテランと同じ精度で異常を検知できる環境を整えます。

③ 「わざわざ見に行く点検」から「異常が教えてくれる点検」へ

若手が感じる「移動のストレス」や「形骸化」への対策として、保全のあり方そのものをアップデートします。

  • IoTセンサーによる予知保全: 振動、温度、電流値などをリアルタイムで監視し、異常の兆候があった時だけ点検に行く「CBM(状態監視保全)」を段階的に導入します。
  • 目的の再定義: 「ルールだからやる」のではなく、「この点検が、過去のどの故障を防いだのか」という成功体験を共有します。自分の作業が設備の安定稼働に直結している実感を育むことが、形骸化を防ぐ最大の特効薬です。

3. 明日から実践!「現場の不満」を「改善」に変える3つのアクション

現場の空気感を変えるために、まずは明日、この3つを試してみてください。

① 若手に「一番しんどい点検」を一つだけ聞く

まずは「聞く」ことから始まります。ただし、漠然と聞くのではなく、対象を絞るのがコツです。

  • アクション: 「今の点検ルートの中で、一番『移動がムダだ』とか『これ意味ある?』と思う箇所を一つだけ教えて」と若手に振ってみてください。
  • 狙い: リーダーが「不満を改善の種として歓迎している」という姿勢を示すことで、心理的安全性を高めます。

② 「正常」の写真を現場に貼る(またはスマホで撮る)

若手の「迷い」を即座に解消する、最もアナログで強力な方法です。

  • アクション: 曖昧な判断基準がある箇所で、「これが正常な状態(針の向き、油の色、ランプの点灯状態)」を写真に撮り、その場に掲示する、もしくは共有フォルダに保存してください。
  • 狙い: 「迷う時間」という最大のムダを排除し、若手の心理的負担を「標準化」によって軽減します。

③ 「スマホの音声入力」で記録を試してみる

いきなりシステムを導入するのは難しくても、手元のツールで「デジタル化の恩恵」を体感させます。

  • アクション: 紙に書く前に、スマホのメモアプリの音声入力を使って点検結果を声で出してみるよう促してください。
  • 狙い: 「手が汚れていても、声なら一瞬で記録できる」という体験を共有することで、DX(デジタルトランスフォーメーション)への抵抗感をなくし、改善への期待感を醸成します。

おわりに:小さな「楽」が現場を強くする

「改善」と聞くと身構えてしまいますが、その出発点はいつだって**「もっと楽をしたい」という現場の正直な欲求**です。

リーダーである私たちがその欲求を拾い上げ、トヨタ思考とAIという武器で形にしていく。その積み重ねが、数年後の「壊れない工場」を作ると私は信じています。

皆さんの現場でも、ぜひ「これ、もっと楽にできない?」という会話から始めてみてください。


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