【不可解】「ブレーキは正常」の報告を覆した、消えたダブルナットと間欠障害

トラブル対応において一番怖いのは、「そこは点検済みです(異常なし)」という言葉を鵜呑みにして、選択肢から外してしまうことです。 今回は、夜勤前の試運転で遭遇した、「正常」の報告の裏に隠れていた間欠的な不具合と、消えたダブルナットの謎について綴ります。

「ブレーキは正常」…その前提が崩れた瞬間

「今晩の夜勤で使うラインなんですが、第1ロールの電流値が高くてハンチングしています!」

日中の試運転中、オペレーターから緊急連絡が入りました。 現場で状況を聞くと、「ブレーキの動作確認はしましたが、ちゃんと動いてます(異常なし)」 との報告。

「ブレーキが正常なら、ロール本体の機械的なロックか、あるいは電気制御の問題か…?」 私はブレーキを容疑者リストから一旦外し、原因の切り分けを行うため、機械保全担当へ連絡。「モーター単体で回して状況を見たい(M単)」と依頼しました。

カップリングを外し、負荷を切り離してモーター単独で回してみる。すると、そこで思わぬ挙動を目の当たりにします。

「あれ? 今、ブレーキ開かなかったぞ?」

さっきは動いたのに、今回は動かない。何度か試すと、開く時と開かない時がある。 報告にあった「正常」は、たまたま「開いた時」を見ていただけだったのです。

あり得ない「消失」と、完治しない電流値

「なんだ、結局ブレーキが犯人じゃないか」 安堵よりも、先入観で判断しかけた怖さを感じつつ詳細点検を行うと、さらに目を疑う光景がありました。

ブレーキの調整ボルトが、セット位置から大きく外れるほど緩んでいたのです。 本来、この部分は振動で緩まないよう「ダブルナット」で締め付けてあるはず。しかし、その肝心のダブルナットが外れて機能しておらず、ボルトの固定が効かない状態でした。 この緩みのせいで、ブレーキの開閉が不安定な「間欠障害」を起こしていたようです。

その後の「グリス硬化」仮説

ひとまずブレーキを適正位置に調整し直し、動作が安定したことを確認。 しかし、現場はそう甘くありません。その後の実負荷テストでも、まだ電流値が高めに出る症状が顔を出しました。

「ブレーキは直した。まだどこか悪いのか?」 焦る気持ちを抑えつつ、60分ほど慎重に連続運転を継続。すると、徐々に電流値が下がり、いつもの正常値へと落ち着いていきました。

今回の推測はこうです。

  1. ブレーキ動作異常: ボルト緩みによる間欠的な引きずり(これは解消)。
  2. グリスの硬化: 長時間停止で軸受等のグリスが硬くなり、抵抗が増えていた。

運転を続けることで熱を持ち、グリスが馴染んだことで数値が落ち着いたのでしょう。ただ、この「電流高」は過去にも時々発生しており、真因は掴みきれていません。

今回の「トヨタ思考」的気づき

【「現地現物」で自分の目を信じる】

トヨタ生産方式で最も大切にされる「現地現物」。 今回、「ブレーキは正常」という人づての情報を信じ込んでいたら、モーター交換や制御盤調査など、見当違いの方向に時間を浪費していたかもしれません。

M単にして、裸の状態の動きを自分の目で見たからこそ、「時々動かない」という真実にたどり着けました。 報告は報告として尊重しつつも、最後は「自分の目」で事実を確認する。トラブルシュートの基本を痛感した一日でした。

現場リーダーへ一言

「前任者が大丈夫と言っていたから」「さっきは動いていたから」。そんな正常性バイアスが、解決を遅らせることがあります。違和感を感じたら、一度リセットして疑ってみる勇気も必要ですよね。今日もお疲れ様でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました