先日、老朽化した設備の更新に向けた打ち合わせでのこと。 ある電機メーカーの営業担当者さんと雑談をしていたとき、ふと私が最近気になっている「AI」について水を向けてみました。返ってきたのは、「社内ではチャットAIを日常的に使っていますよ」という涼しい顔での答え。
正直、ハッとしました。私の現場では、まだその気配すらないからです。 今日の記事は、そんな社外とのギャップに焦りを感じつつも、**「もし私たちの現場にAIがあったら、どんな景色が見えるだろう?」**という、私の個人的な(しかし真剣な)妄想と、そこに込めた若手育成への想いを綴ります。
「え、もう普通に使ってるんですか?」
現在、ある変圧器(トランス)の更新計画を進めており、メーカーの営業担当者さんと現場確認を行っていました。一通りの説明を終えた後、以前から興味があったAI活用について聞いてみたのです。
「そちらでは、AI活用って進んでるんですか?」
すると担当者さんは当たり前のように、「チャットAIは社員が使いながら仕事を進めています」と教えてくれました。
翻って、我が社はどうでしょう。 悲しいかな、AIを活用しようという流れはおろか、新しいデジタルツールに対する積極的な声かけすらほとんど聞こえてこないのが現状です。「製造現場はアナログでなんぼ」という空気が、まだ根強く残っているのかもしれません。 しかし、外の世界は確実に進んでいる。その現実を突きつけられた瞬間でした。
事務作業という「段取り」をAIに任せたい
もし今、私の手元に自由に使えるAIがあったら。やりたいことは山ほどあります。
まず真っ先に思いつくのは、**「デスクワークのムダ取り」**です。 私たち保全マンの本来の仕事は、設備の維持管理や改善活動です。しかし現実は、メールの返信、仕様書の作成、先行手配書の準備、さらにはQCサークルの資料作り……これらに多くの時間を奪われています。
トヨタ生産方式でいうところの「付加価値を生まない作業」です。 これらをAIに任せて、「ここを直して」「この構成でまとめて」と指示するだけで下書きができあがれば、私たちはもっと現場に出て、設備と向き合う時間が作れるはずです。
ベテランの「勘所」をAIが通訳する未来
そしてもう一つ、現場レベルでどうしてもAI活用を試してみたい領域があります。それは**「故障対応のサポート」**です。
電気保全の現場では、故障復旧の際、修理そのものよりも「調査(原因特定)」に時間がかかります。 私は長年この現場にいるので、「このエラーなら、あそこのセンサーか配線怪しいな」という勘所(調査)が得意です。しかし、経験の浅い若手にはそれが難しい。
結果どうなるかというと、若手は悩み、最終的に私に聞きに来ます。 もちろん教えることは大切ですが、私が不在の時や、夜間のトラブル対応で若手しかいない時、彼らは非常に心細い思いをすることになります。
もし、過去のトラブル事例や私の経験則を学習したAIがいればどうでしょう? 若手が「○○のエラーが出ている」とAIに相談し、AIが「まずは××のリミットスイッチを確認してください」と一次回答をくれる。
「私に聞くまでもなく、若手が自力で現場を解決できる」
これは私が楽をするためではありません。若手が「自分で解決できた」という自信を持つための補助輪として、AIがベテランの知恵を貸してくれる。そんな仕組みが作れれば、現場の自立性はもっと高まるはずだと確信しています。
今回の「トヨタ思考」× AI実践
【標準化の新しい形:暗黙知のAI化】
トヨタ生産方式では「標準化」が基本ですが、ベテランの「勘」や「コツ」といった暗黙知は、なかなかマニュアル(紙)には落とし込めません。 しかし、AIであれば、このあやふやな「経験値」をデータとして蓄積し、必要な時に引き出す「検索可能な知恵」に変えられる可能性があります。
「AI活用は、ベテランの頭の中を標準化する究極の手段かもしれない」
そう考えると、まだ会社に動きがなくても、今のうちから自分のノウハウをどう言語化できるか、整理しておく価値はありそうです。
読者のリーダーへ
皆さんの会社では、現場レベルでのAI活用は話題に上がっていますか? 「うちはまだ早い」と諦める前に、「もしあったら、どのムダが取れるか?」を妄想するだけでも、現場を見る目が少し変わるかもしれません。 いつか来るその日のために、まず私たちリーダーが「使いたい理由」を明確にしておきませんか。


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