逃げるベテラン、挑む若手。トラブル対応で見えた「現場の未来」という課題

週の始まりである月曜日。土日からの申し送り事項もなく、今日は穏やかなスタートが切れると思っていました。 しかし、現場は生き物です。機械のトラブルは静かに発生し、それに対する「人の対応」が、今のチームが抱える本当の課題を浮き彫りにしました。 今日は、あるトラブル対応を通じて感じた、若手の頼もしさと、組織としての「未完成」な不安について書き残しておきます。

「原因不明」という一番の厄介事

午前中、現場のある重要設備(リフマグクレーン)で「釈放異常」が発生しました。 リフティングマグネットが荷を離さない、あるいは離した信号が出ないという、電気保全としては非常に神経を使うトラブルです。

連絡を受けたのは、ベテランのSさん。しかし、彼はすぐに私のところへ相談に来ました。「交代勤務のI君(若手)にお願いしてもいいか?」と。

電気保全において、「原因がはっきりしない異常調査」ほど避けたいものはありません。時間もかかるし、迷宮入りするリスクもある。 Sさんの「若手に投げてしまおう」という魂胆は、悲しいかな透けて見えてしまいました。「本当に面倒なことには手を出さないな……」と、リーダーとして、また一人の技術屋として、複雑な心境になりました。

泥臭さが人を育てる

私は、Sさんの依頼を承諾し、若手のI君とK君の二人に調査を任せることにしました。

I君は、まだ技術的に危なっかしい部分もあります。しかし、彼には「文句を言わずに、自分にできることを精一杯やる」という、技術以前に大切な資質があります。本当にどうにもならなくなるギリギリまで、汗をかいて粘ることができる。

結果として、I君とK君は原因を特定し、見事に解決してくれました。 トラブルシュートの最中、配線図を追いかけ、テスターを当て、ああでもないこうでもないと試行錯誤した時間は、彼らにとって何よりの財産になったはずです。

止まった時計と進む時計

報告に来た二人の顔は、達成感で少し頼もしく見えました。彼らはこうして、トラブルの数だけ成長していきます。 一方で、その機会を自ら手放したSさんは、今日も何もできないまま、ただ年齢だけを重ねてしまいました。

順当にいけば、次期リーダーはSさんになります。 「面倒なこと」を避けてきた彼が、現場の責任者となったとき、果たして若手たちはついていくのか。そして、いざという時に現場を守れるのか。 技術的なトラブルは解決しましたが、組織としての「未来への不安」という課題は、解決されないまま私の胸に残りました。


今回の「トヨタ思考」的気づき

【モノづくりは人づくり】

トヨタ生産方式の根底にあるのは「人づくり」です。 保全における技術力、特にトラブルシューティング能力は、マニュアルを読むだけでは決して身につきません。「現地現物」で悩み、冷や汗をかいた経験の蓄積こそが、直感や応用力を養います。 仕事を振る(任せる)ことは大切ですが、それは「育成」のためであるべきで、「回避」であってはなりません。リーダーとして、誰にどの経験を積ませるか、その意図をもっと明確にしなければならないと自戒しました。


同じ現場リーダーのあなたへ

あなたの現場にも、「仕事をうまくかわすベテラン」と「損をしてでも頑張る若手」がいませんか? その不公平感にイライラすることもありますが、長い目で見れば、汗をかいた人間だけが本物の技術を手にします。 私たちは、不器用でも前を向く彼らの「防波堤」になり、正当に評価してあげることから始めていきましょう。

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