普段なら呼吸をするようにこなせる作業でも、「非日常」の要素が入ると、見えていたはずのものが見えなくなることがあります。
今回は、私が担当するエリアのある大型コンプレッサの更新工事で起きた、冷や汗が出るような「思い込み」の失敗談を共有します。
高圧電力が絡む緊張感の中で、私たちが何を見落とし、そこから何を学んだのか。未完成なリーダーのありのままの記録です。
高圧6000V、ピリつく現場の緊張感
その日は、大型設備の始動盤に関わる電源敷設工事でした。扱うのは6000Vの高圧電源。普段扱い慣れている低圧とはワケが違います。
万が一のミスも許されないため、朝から現場の空気は張り詰めていました。 私たちは図面を広げ確認を行いながら、一次側の電源遮断操作と接地の取り付けを慎重に進めました。「ここは確実に切れている」「接地よし」。全員で声を出し、物理的な安全対策は完璧に整えたつもりでした。
「よし、これで安全に繋ぎ込みができる」
ここまでは、順調でした。あくまで、ここまでは。
「あれ、そこはそっちじゃ…?」最後の最後で起きたくいちがい
工事も終盤に差し掛かり、いよいよ電源投入の準備に入ろうとしたときです。立ち会っていたメーカーの担当者さんから、さらりと言われました。
「盤のA種接地、まだ繋がってないようですが……?」
一瞬、頭の中が「?」で埋め尽くされました。 私が事前に認識していた自分のタスクは「一次側の電源ケーブル敷設」まで。盤体そのものの接地工事(A種接地)は、当然メーカー側、あるいは据付業者の範囲だと思い込んでいたのです。
「えっ、それはそちらの範囲だと思っていました」 「いや、電源工事側にお願いする想定でした」
現場に流れる気まずい空気。 結局、その場ですぐに部材を手配し、私たちが対応することで事なきを得ましたが、もしこの指摘がないまま進んでいたら……と想像すると、背筋が凍る思いでした。
「言わなくても分かるだろう」は禁物
今回の原因は明白です。 技術的なミスではなく、工事前の「境界線」の確認不足です。
「電源ケーブルを引く=それに付随する接地もやるはず」という相手の思い込み。 「盤の設置工事=盤のアース工事もセットのはず」という私の思い込み。
互いにプロだからこそ、「これくらいは常識的に相手がやるだろう」という甘えが、作業の隙間(ポテンヒット)を生んでしまいました。6000Vの遮断確認にはあれほど慎重だったのに、作業分担というソフト面の確認では、高圧特有の緊張感に意識を持っていかれ、詰めが甘くなっていたのです。
今日の「トヨタ思考」的気づき
【次工程はお客様、前工程もお客様】
トヨタ生産方式では「後工程はお客様」と言いますが、今回のような協業工事では、前後の工程(相手業者)との**「のりしろ(オーバーラップ)」**を作っておくことが重要だと痛感しました。
- 曖昧なグレーゾーンは、あえて「バカになって」聞く。
- 「A種接地はどちら持ちですか?」と、分かっているつもりでも口に出して確認する。
「そんなことまで聞くのか」と思われても、事故や手戻りが起きるより100倍マシです。カッコつけずに確認することこそ、リーダーの責任なのだと再認識しました。
同じ現場リーダーのあなたへ
打ち合わせの段階で「なんかここ、ふんわりしてるな」と感じる箇所はありませんか? その直感はたいてい当たります。遠慮はいりません。その「ふんわり」を「くっきり」させるために、今日もしつこいくらい確認していきましょう。


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