保全の仕事をしていると、現場からの曖昧な依頼に対してつい感情的になり、モヤモヤしてしまうことはありませんか? 「まずは自分で確認してほしい……」そんな未完成な私の感情を、思わぬアプローチでほぐしてくれた後輩とのエピソードをご紹介します。技術だけが保全のスキルではないと、改めて気づかされた一日でした。
申し送りに滲み出た私の「モヤモヤ」
先日、現場のオペレーターさんから「ある設備の信号機(状態表示灯)が点灯しないので見てほしい」という依頼がありました。急いで現場へ向かい確認したところ、拍子抜けすることに、信号機は全く問題なく点灯したのです。
事情を聞くと、どうやらオペレーターさん自身で確認したわけではなく、誰かから聞いた話をそのまま私たちに伝えてきたようでした。「自分で状況を確認せずに依頼してくるなんて……」と、私は日頃から感じていた小さな不満を抱えながら、その日の申し送りノートに事の顛末を記載しました。少し皮肉を込めて、「自身での確認ではなく、伝聞のみで状況を把握していない様子だった」というニュアンスを滲ませてしまったのです。
「モヤモヤしてますよね」と笑い飛ばす才能
翌日、その申し送りを読んでいた後輩のO君が、私に向かってこう言いました。
「なんか、モヤモヤしてますよね」
その独特な言い回しと、あまりにも的確な指摘に、私は思わず吹き出してしまいました。自分の中にあった、言葉にしきれない小さなトゲのような感情を「モヤモヤ」という一言で表現され、妙に納得してしまったのです。そこから「モヤモヤするよね」と二人で感覚を共有しているうちに、先ほどまでの不満はどこへやら、なんだかおかしくなってきて、とても楽しい時間へと変わりました。
O君には、話しているだけで場の空気を柔らかくし、自然と人を笑顔にする不思議な魅力があります。例えば、大きな買い物の失敗や、趣味で散財してしまったような普通なら落ち込む出来事(スマホゲームの課金で大失敗した話など)も、彼はまるで上質なコメディのように話してくれます。自分の不運をネタにして周囲を笑わせることができるのは、彼の人柄の良さそのものです。
技術不足を補って余りあるコミュニケーション力
仕事の面において、O君は電気保全の専門的な技術調査に関しては、まだ少し苦手意識があるのかもしれません。しかし、彼にはそれを補って余りある大きな武器があります。それは「工場のオペレーターさんとのコミュニケーション能力」です。
彼は現場にスッと入り込み、オペレーターさんが何を言っていたのか、本当はどういう状況だったのかを丁寧に聞き出し、的確にフィードバックしてくれます。機械の不具合を直すためには、まず「正しい情報」を引き出す必要がありますが、彼はその点においてチームにとって欠かせない存在です。
技術を磨くことももちろん大切ですが、人との関係性を築き、情報を引き出して伝える力も、現場では極めて重要なスキルだと再認識しました。
今回の「トヨタ思考」的気づき
【適材適所と「現地現物」を支える人間関係】 トヨタ生産方式の基本に「現地現物(実際に現場へ行き、事実を確認する)」があります。今回、オペレーターさんが現地現物を怠ったことに私は不満を覚えました。しかし、それをただ批判するのではなく、O君のように相手の懐に入り込み、円滑なコミュニケーションを通じて「本当の事実」を引き出すアプローチも、現場改善には不可欠です。
リーダーとして、メンバーの「技術的な弱み」ばかりに目を向けるのではなく、O君が持つ「コミュニケーション能力という強み」をどう活かすか(適材適所)を考えることが、チーム全体の力を底上げすることに繋がると学びました。
読者への一言
皆さんのチームにも、技術面以外でチームの雰囲気を明るくし、救ってくれるような存在はいませんか? ぜひ一度、メンバーの「意外な強み」に目を向けてみてください。もしよろしければ、皆さんの現場のムードメーカーのエピソードも教えてくださいね。


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