保全の現場につきものなのが、ホコリをかぶった分厚い「完成図書」やファイル群です。トラブル対応のたびに重いバインダーをめくって目的の図面を探す……そんな時間を減らすべく、現場の図面の電子化に向けて動き出しました。 今回は、高価なシステムを導入する前に、泥臭く「今ある環境」で試行錯誤してみたリアルな記録をお届けします。まだ運用ルールも固まりきっていませんが、この「未完成」な状態のアイデアが、同じようにDX化に悩む現場のヒントになれば嬉しいです。
専用ソフトと現場の「本当のニーズ」
図面の電子化を進めるにあたり、まずは情報収集から始めました。他拠点の応援メンバーが現場で使っている図面管理ソフトを見せてもらう機会があり、実際の使い勝手をヒアリングしてみたのです。
そのソフトは、図面をOCR(光学文字認識)で読み込み、機器名やメーカー名で一発検索できるという優れものでした。確かに1枚単位の図面をピンポイントで探すには素晴らしい機能です。しかし、私たちの現場で優先したいのは「分厚い完成図書を、ファイル構造ごと丸っと管理する」こと。専用ソフトは魅力的でしたが、今の私たちの身の丈や用途とは少し方向性が違うなと感じました。
既存ツールと「20分」の実験
そこで原点に立ち返り、「PDFベースでの図面管理」を検討することにしました。PDFの分割や結合、ページの回転、簡易的なOCR機能があれば、現場の運用には十分耐えられます。
最初は有名な高機能PDFソフトの購入を考えていたのですが、ふと社内の購入履歴を調べてみると……なんと昨年、別の用途で導入されていた「PDF編集ソフト」がすでに存在することが判明したのです。まさに灯台下暗し。新しいソフトを申請して購入を待つことなく、今ある環境で電子化のスタートラインに立てたのは大きな収穫でした。
さらに、頭で考えるだけでなく、実際に手を動かして「作業量の目安」を測ることにしました。 約500ページある完成図書を1冊、会社の複合機でスキャンしてみたのです。古い紙なので多少の紙詰まりはありましたが、結果は「1冊およそ20分」。この「20分」という基準タイム(現状の作業実力)が分かったことで、今後の計画がグッと立てやすくなりました。
運用に向けた「未完成」なアイデアたち
実証実験を終え、実際の運用に向けたイメージが少しずつ湧いてきました。今は以下のようなルール作りを構想しています。
- 役割分担:「紙をスキャンする担当」と「PDFを編集・整理する担当」で作業を分担し、並行作業で効率化を図る。
- 優先順位:片っ端からやるのではなく、トラブル対応で最もよく使う「展開接続図」や「取扱説明書」から優先的に電子化する。
現在一番悩んでいるのは、500ページの完成図書を「どの単位で分割するか」です。細かく分けすぎるとファイル数が膨大になり管理が煩雑になりますし、1つの巨大なファイルのままでは現場で開く時に重くて使いづらくなります。
そこで今日思いついたのが、**「フォルダとファイルの階層管理」**です。
- まず、大枠となるフォルダを作成し、名称を「管理番号_図面名称_発行日」とする。
- そのフォルダの中に、分割したPDFファイルを格納し、ファイル名には「001-100」「101-200」といったページ範囲を入れる。
このように整理すれば、一つのフォルダの中にページ順に分割ファイルが並びます。元のバインダーのどの位置にあったか直感的に分かりますし、現場で開く際もデータが重くなりません。さらに、フォルダのトップに「目次ページ」となるPDFを置き、そこから各分割ファイルへリンクを飛ばすようにすれば、紙のインデックスをめくるような感覚で使えるのではないかと考えています。
今回の「トヨタ思考」的気づき
『お金をかける前に知恵を出す。そして、まずは時間を測る』
DXやデジタル化というと、どうしても「高価で便利な新しいシステムを入れること」を目的にしてしまいがちです。しかし、トヨタ生産方式の基本は「今ある設備や道具の能力を最大限に引き出す」こと。今回、新ソフトを買わずに社内の既存ソフトを発掘できたのは、ムダな投資を防ぐ第一歩でした。 また、机上の空論でスケジュールを組むのではなく、実際に複合機の前でスキャンして「1冊20分」という事実(現状把握)を掴んだことも、現場改善における重要なプロセスです。
読者(同じ現場リーダー)への一言
分厚い図面の電子化は、想像するだけで途方もない作業に思えて腰が重くなりますよね。私もまだまだ手探りの状態ですが、今回のように「とりあえず1冊スキャンしてみる」という小さな一歩から、改善の道は開けるのだと実感しています。 あなたの現場でも、「実は社内に眠っている便利なツール」はありませんか? 完璧なシステムを待つのではなく、手元にある道具で、まずは小さく試してみましょう!

コメント